葛飾北斎の水彩画がオランダで見つかり、驚きが広がっています。
新たに見つかった水彩画が西洋の手法を取り入れた北斎としては異色の物だったからです。
しかし、一方で彼の絵画の中には遠近法を使っている様な絵がありました。
日本画の常識と葛飾北斎という才能について考えていきましょう。
葛飾北斎の肉筆画がライデン国立民族学博物館(オランダ)で見つかる!!⁂画像⁂
そもそも日本画では西洋の手法が定着しなかったと言われてきました。
それはその通りなのですが、言われている内容に少し違和感があったのを覚えています。
多くの場合日本絵画の後進性と結び付けられていたからです。
当時、明治維新という時代の流れに絵画も影響を逃れられませんでした。
その中で大きく評価を下げてしまったのが日本画でした。
もっとも、自分達が描いているのが日本画であるということは本人達も知りませんでした。
描いている人はただ買う人が喜んでくれる絵を描いていただけでした。
この辺りからすでに西洋とは絵画に関する感覚が違いますね。
西洋の場合、絵画は教会や貴族といった権威から逃れることは出来ませんでした。
それらの価値観の延長上にあるものでした。
しかし、日本では一般人が消費するもの。
こうした価値観の違いをそのときには気づくことは難しかった。
今回、オランダのライデン国立民族学博物館所蔵で、長く作者不明とされてきた6枚の絵が、江戸時代後期の浮世絵師、葛飾北斎(1760~1849)の肉筆画であることが、同博物館の調査で分かりました。
西欧の水彩画の技法をまねた、北斎としては異色の絵です。
親交があったドイツ人医師シーボルトらから影響を受けた作品群とみられています。
<オランダのライデン国立民族学博物館所蔵で長く作者不明とされてきた6枚の絵が、葛飾北斎の肉筆画だと判明>
上手い人は何しても上手い。浮世絵でも遠近法使ってたしなー。1枚目が今回北斎筆と判明した絵https://t.co/ghMFEZAxpw pic.twitter.com/G6Eu92ebHF— junkTokyo (@junktokyo) 2016年10月22日
オランダ・ライデン国立民族学博物館で長らく作者不明とされてきた日本伝来の水彩画6枚が、葛飾北斎直筆であることがシーボルトの目録で確認。北斎で西洋画の技法を取り入れたものとしては油絵なんかも残ってるし、まあ描いてないわけないんだよあの画狂老人が。今生きてたらきっと萌え絵描いてたよ
— Akira Ebihara (@otoko_ebihara) 2016年10月22日
作者不明とされてきた絵、北斎の肉筆画と判明。オランダの博物館員「西洋人が描いたと思っていた」→https://t.co/AtvGVkdFhd
江戸期の絵師は、外国人から秘かに受注した場合、落款を押さず「作者不明」として描いたと。シーボルトと交流のあった北斎でさえ同様だったとは驚き pic.twitter.com/0S6BqccC7t— 盛田隆二⭐新刊『蜜と唾』(光文社) (@product1954) 2016年10月22日
6枚は江戸の街並みを描いた風景画。
タイトルはありませんが、和紙に「日本橋」「両国橋」「品川」などを題材に川や人々や橋が描かれています。
空を大胆に取り入れた構図などに西洋画の特色が表れているといいます。
北斎研究で知られるライデン国立民族学博物館のマティ・フォラーシニア研究員などのチームが、シーボルトの子孫が所蔵していた目録と照らし合わせたところ、「北斎が我々のスタイルで描いたもの」という記述が見つかり、北斎の作品である可能性が高いことがわかりました。
マティ・フォラーシニア研究員は「当初は西洋人が描いたものと考えていましたが、シーボルトの目録を見て本当に北斎が描いたのかと非常に驚きました」とコメントしたという。
長崎のオランダ商館で働いていたシーボルトは1826年に江戸に上った際に北斎らと面会しているそうです。
シーボルトというと、幕末の志士との関係がよく知られていますが、伝統的な浮世師である北斎にも会っているのですね。
同博物館には、この6枚とは別に、北斎の肉筆画と認められた11枚が所蔵されています。
北斎の肉筆画はとても貴重なので資料として現存するのは嬉しいですね。
当時において、西洋の手法が自分達の手法よりもレベルが高いとされるのは仕方がありませんでした。
経済規模においても、文化的影響力や実践している人数でも西洋画の方がずっと多い。
その頃、東洋では中国も韓国も文化的に遅れているとみなされていました。
日本ではそれぞれの作家が売れる作品を描くか、お抱えになるか、自分の趣味で好きなものを描くかでした。
北斎の絵画では遠近法を用いたと思われる作品が次のようにあります。
彼が西洋の手法を使えなかったというのは違和感があります。
表現したいものに対し必要を感じなかったというのが本当ではないでしょうか。
葛飾北斎の肉筆画がライデン国立民族学博物館(オランダ)で見つかる!!⁂画像⁂
「表現したいものに対して必要を感じない」とはなにか?
それは今の日本の絵画の環境を見ても分かります。
例えばマンガ。例えば萌え絵。
おいおい絵画の話をしているんだけど?
そう考えますよね。
しかし、実際はこうしたものの方が、浮世絵には近いのだと思います。
基本売られているもので、趣味が合う人が購入するもの。
つまり、ポップカルチャー、ポップな物です。
日本はおそらく世界で一番早くポップカルチャー化した国だと思います。
江戸時代には浮世絵だけではなく、演劇、小説などもポップ化していました。
演劇では歌舞伎、小説では南総里見八犬伝など。
いずれも一般の方が対象の演劇や小説です。
こうした背景には例えば寺子屋があり識字率が高い事があります。
その他にも女性でも演劇などを観るのに障害がないことなど。(宗教、文化、習慣などで)
これらのおかげで、すでに内容的に物凄くマニアなものがつくられていたんですね。
浮世絵だってそうです。
ブロマイドの様なものでした。
といっても、使える色も限られますし、内容も幕府がうるさい。
その中で買う人が喜んで購入してもらえるものを描いていました。
浮世絵の特徴として見ている人との距離感があると言われています。
この距離感は物質的なものだけではなく心理的なものでもあります。
西洋のものは影などでも見てもわかりますが、対象と自分を分ける傾向が強いんですね。
日本の場合は対象と距離がないと言われており、そういう表現をしています。
これは自然に対する態度でも同じです。
この様な環境下で浮世絵は「抽象化・象徴化・シンボル化」していったわけです。
その意味で浮世絵は現代美術の始まりといえるのかもしれません。
もちろん、日本人はそんなこと気にせずに好きなものを買いまくっていたわけですね。
いやぁ、そういうところ大好き。
一番しょうがない感じがいいですよね。今も変わりませんが。
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